こんなん作ってみました | 眼鏡の妄想日記

こんなん作ってみました

 グラスの中の氷が、ウイスキーに溶かされ音を立てた。私の居る小さな部屋の明かりは、手元にある小さな電燈の一つ。私は氷の立てた音の余韻に浸りながら、オレンジに照らされた氷の陰影を眺めていた。


 私は最近、一年とちょっと付き合っていた彼と別れた。何が理由かは、私がいくら食い下がっても、詳しくは言ってくれなかった。ただ「お互いのため」だとかは言っていた。彼なりの優しさか、それとも彼自身を守るためなのか。しかし、そんなことはどうでも良い。ただ、付き合っている時はいつも優しくしてくれていたし、大きな不満もなかったから、私は彼と結婚をしてもいいかなあ、なんて考えた夜もあった。

 私ももう今年で二十八になる。焦っているのだろうか、この一年はバカにならないと思う。今さら出会いを求めて積極的に何かをするとか、そういうことはあまり考えられない。もういっそ、結婚のためにお見合いをしてみようかとも思った。また、こんなにも結婚にこだわっている自分に驚きもあった。そんな私に届いたのが今日の同窓会の話だった。


 私はいつもより少しお洒落をした。ちょっとだけ綺麗に見えるように、けれどもあまり目立ち過ぎないように。

 会場に着くと、懐かしい顔が受付に立っていた。挨拶をして、受付で名前を書いて、また後でと言ってから中へと入る。会場は大勢の“元学生”によって埋め尽くされていた。学生の頃とは違い、みんな顔立ちがすっかり大人になっている。みんないい年なのだから当然なのだが。

 私はまず、よく一緒に行動していた友達を探すことにした。彼女がみつかれば、他の友達もきっと近くにいるだろう。会場のいたるところから再開を懐かしむ声がする。私も早く友達に会いたくなっていた。一人で歩く私の肩を誰かが叩いた。それは、私が学生の頃付き合っていた人だった。彼とは卒業を前にして別れ、卒業して以来、久しぶりの再開だ。お決まりの挨拶を済ましてしまうと、会話が詰り、お互いになんとなく話辛い雰囲気になってしまった。彼が気転を利かせ、私をみんなのところに連れて行くまでしばらく、私は沈黙に身を委ねた。


 氷は光をそのまま通すほど小さくなり、グラスに注がれたウイスキーもすっかり薄くなっていた。私はそもそもお酒が強いほうではない。それでも強めのお酒が好きなのはどうしてだろうか。ほんの少しずつ、舐めるようにして飲みながら、時間をかけて飲むのが好きなのだ。そう少しずつ飲む。グラスに何度も口付けをするようにして。